番外話









それは、たしかにあいつだった。





俺はローレンシウム郊外で、三人兄弟の真ん中として生まれた。
上が三歳離れた姉、セレン。
下は双子の弟、レロム。
真ん中が俺、ノレン。


幸せだった。


両親が買い物に行ったっきり戻ってこなくなるまで。




その日、夜になっても、両親は帰って来なかった。ねぇちゃんに聞いても解らないと答えるだけ。
朝になっても帰って来なかった。
さらに弟までも消えていた。

昨日から少し様子が変だった気がする。
弟の目が赤くて……
なぜかいつもより刺々しい空気を漂わせてたような。


それからねぇちゃんと俺だけの二人暮らしが始まった。


二週間程経ったころ、俺は考えた。

「両親と弟を、捜しに行くべきなのではないか?」


悲しみを引き摺って過ごすより、
両親の死体が帰ってこなかったことについて一人で考えるより、

自分で全てを掴めばいい。



俺はねぇちゃんに何も言わず家を出た。
全く行く宛てが無く、転々としながら家族を捜した。



気がつけば一年が経とうとしていた。



もう、諦めたほうがいいのかな?

そう思いふと空を仰いだその時、俺の上を銀色の風が吹き抜けた。




それがあいつとの、


何気ないすれ違い
あれは神様の気紛れか。